ふくろ茸って?

フクロタケ(テングタケ科)

■学名:Volvariella volvacea

■英名:(Chinese) Straw Mushroom

 

 原産は、中国(一説にはヒマラヤ)のキノコで、温帯から主に熱帯地方に分布しており、中国南部・台湾・ベトナム・フィリピン・タイなど東南アジアが主な生産地です。中国南部から東南アジアにかけては最もポピュラーなキノコのひとつです。中華料理では特に好まれメニューも多く、華僑の進出とともに各地の栽培が始まったものと思われます。

 生産量世界一のキノコはシイタケですが、マッシュルームなどに次いでフクロタケは5番目(世界的なので未確認、タイでは8万4000トンほど[2003-2004年]生産)くらいの栽培量だそうです。台湾では比較的、先進的な設備栽培が行われていましたが、近年、人件費の高騰などの理由から主生産地はベトナム(特に缶詰など)に移行しています。

 一般的なキノコが朽ち木などに発生する腐朽生に対して、フクロタケは、稲ワラなどに発生する草生のキノコで、中国では「(草茹(口が古の字)[ツァオグウ])(草キノコの意)と呼ばれています。タイでは「ワラ茸」とも。

 形態は、初期は茶褐色の卵形で袋状になっており、中にキノコがカサはつぼめた格好で入っています。これが和名『ふくろ茸』と呼ばれる所以で、成長とともに中のカサが大きくなり、まわりの袋が破れシイタケのように開きます。(中華料理では、開く前の丸い状態のものが主に使われる。)大きさも丸い状態で、ウズラの卵くらいから鶏卵くらいまで成長します。(タイでは昔、故プミポン国王の式典のために1個で1キロになるほどのものを栽培したそうです!?)

 食材としても産地ではごく一箱的に利用されており、中華料理はもとより世界の三大スープとして名高いタイ料理「トムヤムクン」や「タイカレー」にはかかせない食材です。また、中国では薬膳キノコとしても珍重され、その薬効は『伝染病に対する抵抗力を増し、傷口の治りを早め、壊血病の予防に用いる。降圧作用あり』とあります。

 国内の研究でも『いわゆるΟ-6-分岐β-(1→3)グルカンが抽出されるが、β-(1→3)グルカンは主として宿主の細胞性免疫に働いてマクロファージの活性化やナチュラルキラー細胞の強化など生体防御機構を増強することにより、抗腫瘍効旺を発現するものと考えられている。』とあります。(「キノコの化学・生化学」(株)学会出版センターより)

 独特な食感や旨みがあるにもかかわらず日本での利用は、現在100%輸入水煮加工品(中国・ベトナム・タイ・フィリピン産他)や佃煮のみとなり、これは、ほとんどの栄養素・旨みが逃げており、食感のみのものである。「水煮」と「生(冷凍)」のフクロタケとでは、味・食感・栄養・形状などまったく違うものです。

 今日の日本(を含め生産現地以外のすべての国)で、ほとんど生産も流通もしていない理由のひとつは「傷みが早い」ということです。フクロタケは30℃以上の高温・多湿の環境で生産され、植菌して14日程で収穫できるほど成長が早く、同様に収穫後も成長(傷み)も早いため、2〜3日で食味期間を失ってしまいます。そのため生産地でも生《フレッシュ》で売っていますが、缶詰も普通に食されています。

 でも、熱帯性のキノコの中ではまちがいなく一番(と言っていいと思う)美味しいキノコです!